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# 「あなたはキムタクで・す・か・ら!」……『MR. BRAIN』

  5月から始まった『MR. BRAIN』が最終回を迎えました。「全8話って短すぎます」と感じた、4月から7月に放送されたミステリー・サスペンス系ドラマのなかでは、私好みのおもしろい作品でした。ただ、「九十九です。あの、九十九と書いてツクモと読みます」(だったかな)というセリフを聞くたびに、「いえ、あなたは木村拓哉と書いて、キムタクですから!」とツッコンでました。なんと言うか、全話を通しても九十九龍介というキャラクターが見えなかったと言うか、「すっごく木村拓哉です」という感じだったんですよね。

 たとえば、水谷豊が演じているのはわかっていても、杉下右京は杉下右京だし、左文字進は左文字進だし、草場一平は草場一平だし、そこに水谷豊ではないキャラクターの存在を感じるわけです。どれも小林稔侍の顔なんだけど、窓辺太郎は窓辺太郎であり、五十嵐杜夫は五十嵐杜夫であり、神保徳之助は神保徳之助である、と。ソフト帽にトレンチコートで査察に踏み込む窓辺にも、売り切れ必至の駅弁求めて右往左往する神保にも、「小林稔侍」を感じたことはありません。渡瀬恒彦は演じる役柄が似ているせいか、鳥居勘三郎と夜明日出夫と加納倫太郎がときどきかぶるのですが、それでも「渡瀬恒彦ではない人たち」です。
 風貌のインパクトが強すぎて、どのドラマでも「あ、いるいる」と目が行ってしまう、「インターナショナル蟹江」こと蟹江敬三でさえ、袴田俊郎は「このクソオヤジ」だし、須藤正次は「もう、須藤さんっ!」だし、中天游は「せ、先生!」だし。
 九十九龍介のようなマニアックな変人というところでは、探偵ガリレオこと湯川学も相当なものでしたが、そこに「福山雅治」を感じたことはなかったんですよね。むしろ「ああ、なるほど。『探偵ガリレオ』ってこんな人かあ」と、人物像が明瞭になりました。

 なのに、『MR. BRAIN』においては「キムタクが変人の役をやっている」としか思えない。これは科学警察研究所のメンバー全員に言えることで、「ああ、爆笑問題の田中裕二がいる〜」「トータス松本は身体もでかけりゃ態度もでかいな。それにしてもいい声ですよね」「なぜそこまでもてない男のステレオタイプなんだ、設楽統!」というアリサマ。正月番組の『新春かくし芸大会』で有名人が意外な役をやってみました(実は演技もできるんです)的な……言ってしまえば、役になりきることより、この人がこんな役を演じているということが見どころという、学芸会に似たノリだなあ、と。
 対して、警視庁側の香川照之や水嶋ヒロ、そして市川海老蔵は、すごく丹原朋実だし、まったくもって林田(リンダ)虎之助だし、すべての登場人物を食うほどの存在感をもった武井公平でありました。刑事コンビには科警研メンバーに通じるコメディ要素も入っていたはずのに、キャラクターがしっかり立ってましたよ。……ひとつのドラマのなかで、なんなんだろう、この差は。
 考えてみるに、制作サイドが演者の個性をキャラクターに反映しようとして、やりすぎてしまったのではないか。そもそも九十九龍介に元ホストという設定はいらなかったと思うのですよ。なんだか「木村拓哉が九十九龍介を演じているのは、彼に元ホストという設定があるからです」と言いわけされてる気がする。いいじゃん、ひとりの男が事故って、そのために脳機能が特異になっちゃった、で。木村拓哉は、ごちゃごちゃと社会的な肩書きのつかない、普通の人を演じるほうがうまいんだから。私が彼の演技に「いいなあ」と注目したのは、『ギフト』と『眠れる森』だもん。

 物語も全8話を俯瞰した構成もよく考えられていたし、人情に頼らず、科学的に犯人を追いつめていく過程にも好感がもてました。「事件」という事象のなかで、派手な部分と意外な部分と「そうだよね。そうなるよね」という予定調和的なところの配分もちょうどよかった。惜しむらくは……というところで、80点かな(笑)。


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