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映画、コミック、本から、お薦めものをピックアップ!

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# 『血界戦線』と9.11の私的関係
JUGEMテーマ:漫画/アニメ


 1990年に公開された『ダイ・ハード2』には、テロリストにより飛行機が墜落させられるシーンがあります。このシーン、私は「まさか、まさか」と思いながら観ていました。まさか本当に大型旅客機を乗客乗員ごと地面に激突させ、炎上させるなんて、実際に目の当たりにするまで信じられなかったのです。
 ずっと上空で旋回待機させられ、燃料が尽きかけ、ようやく着陸できると安堵した乗客乗員たち。けれども仕組まれた管制指示により、地面がどんどん迫ってくるのをただ見ているしかなく、死の恐怖を味わいながら最期を迎えたのです。事故であったとしても、飛行機の墜落は凄絶に酷いものです。それが人の手で為されるさまが描かれるとは!
 たとえフィクションでも描いていいことと悪いことがあると思ってきた私にとって、『ダイ・ハード2』のあのシーンは「決してあってはならないこと」として、絶対に映像化されるべきではない、受け入れられないものでした。それも、そのシーンがただテロリストの非情さを表現し、マクレーンがテロリストをやっつけてもいい言い訳として置かれたことに、それまで映画人が守ってきた表現上のモラルの一線が越えられてしまったという、危機感を覚えたのでした。

 飛行機が人為的に墜落させられる。それが生理的な恐怖として心のなかに植え付けられてから11年。2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件が起こりました。
 11日深夜、たまたまテレビをつけたら、ニューヨークの世界貿易センターのツインタワーに旅客機が衝突する模様が流れたのです。最初は、また悪趣味な映画の紹介映像かと思いました。まさか、本当に、現実に、こんなことを行なえる人間がこの世にいるとは思いもよらなかったからです。

 2000年から2001年に移る日、21世紀の幕開けの日、私はニューヨークにいました。夜はタイムズ・スクエアのニューイヤー・カウントダウンに参加するつもりで、その前に16時出航のサークル・クルーズの船上から年の瀬のマンハッタンを眺めていました。


2000年12月31日、世界貿易センタービルを中心としたワールドトレードセンター・コンプレックス(WTC)


 水上から見るロウアー・マンハッタンには、世界貿易センターのツインタワーを中心に、まさにレゴブロックで組まれたようなビル群が屹立していて、エンパイアステートビルやクライスラービル、トランプ・ビルなどに比べると「モデルハウスみたいなビルだな」と感じたことを覚えています。

 世界一を誇った超高層ビルに旅客機が突っ込み、その衝撃で煙を上げながら巨大な建物が崩壊していく。テレビの中の映像がほんの数時間前に起こった現実だと悟ったとき、フィクションにさえ恐怖と怒りを感じた事態に、さらに超高層故に逃げられず、炎に追われて飛び降りるしか選択できなかった人々の恐怖、あまりの理不尽への怒りが加わり、座っておられず、テレビの前をただウロウロと歩き回りました。その間、「世界の良心が守ってきたモラルの一線が越えられた。『これだけはしてはいけない』と歯止めをかけていた“人類の統一意識”のようなものが失われた。良き世界は終わった。この瞬間から世界は変わる」という思いが頭の中を駆け巡っていました。
 当時、マンハッタンに住む友人とニュージャージーからマンハッタンに通勤する友人がおり、ふたりの安否を気遣いながら、そして無事を聞いて安堵しながら、私の常識で理解できた世界の終わりと得体の知れない世界の始まりとを感じたのでした。


2005年5月、世界貿易センターのツインタワー跡地「グラウンド・ゼロ」


 『血界戦線』を読んだとき、「ああ、これは」と思いました。ここで描かれる「紐育(ニューヨーク)大崩落」、そして「再構成されたヘルサレムズ・ロット」こそ、私が9.11の前後に覚えた感覚そのものだ、と。
 ある日突然、常識を超えた“思考”が現世のニューヨークを崩落させ、常識を超えた“異界(ビヨンド)”が組み込まれ、常識を超えた“異界人”が隣人となります。異界人は、人類(ヒューマー)以上の力を持ち、罪の意識なく人類を傷つけ、屠ります。弱肉強食の理において、力で勝る彼らは捕食者、人類は被食者。異界人が人類の存在に配慮するなどありえないことでした。
 そんな状態から、人類は異界人とコンタクトを取り、「クライスラー・ガラドナ合意」で食人を禁止するなど、対話で生き延びる方法を模索します。
 その「合意」を無視して人類を襲う異界人や退屈しのぎに世間を騒がせたい愉快犯たる堕落王たちと戦うために結成されたのが、超人秘密結社「ライブラ」。もともと歴史の裏側で人類を襲う吸血鬼「血界の眷属」と戦ってきた、特殊な戦闘能力を備えた「牙狩り(ヴァンパイア・ハンター)」から成るライブラ(天秤)が、“世界の平和”ではなく、“世界の均衡”を守るために存在するというところが大いなるポイントだと思うわけです。
 平和というのは、相互理解と良心と善意と我慢と忍耐がなければ成立しない、理想的状況というより幻想的状況。それこそ仮想敵でも作って意識統一でもしないかぎり、たとえば一組織内でも平和状態を維持するのは困難です。もはや平和など望むべくもないこの世界で、それでも全世界的な戦争が始まらないようにするにはどうするか。国と国、組織と組織、思想と思想の均衡を図るしかない。
 均衡という言葉には、9.11後の世界が目指すしかない方向が、諦念を含ませて示されているように感じます。

 同時に、紐育大崩落から3年。異界人が隣を歩いていようと、頭上を飛んだり跨いだりしようと、街なかで騒ぎを起こそうと、共に暮らすことを選び、慣れてしまう人類の強かさ、それでも異界人を差別する狭量さとその異界人に簡単に殺されてしまう脆弱さが描かれているところが、『血界戦線』のテーマたる“day in, day out”(日常話)なんだな、と。

 さらに、ライブラのメンバーが血液を変質させた対「血界の眷属」仕様の人間兵器であり、流す血が武器になるというところに、敵を屠るには自身も血を流さなくてはならないという戦いの理が見え隠れして、そのあたりの正々堂々さが好きだったりします。

 SF伝奇アクションとして充分に面白い。吸血鬼や人狼などの伝説、クトゥルフ神話、菊地秀行の「魔界都市<新宿>」、アメコミヒーロー、古今東西のアクション映画やアメリカのTVドラマのノリなど知っていれば、細かいところで楽しめる。
 それに加えて、テレビ越しとはいえ目撃してしまった9.11のショックを引きずる私には、『血界戦線』はあのとき崩壊したままのなにかを、諦念を漂わせながらも痛快に蹴散らしてくれる、慕わしい作品なのです。


※ beyond= …を越えて、…の範囲を越えて

 
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# 『デザートフラワー』は今観ておきたい映画
JUGEMテーマ:映画


 『デザートフラワー』は、ソマリアの砂漠で生まれた少女ワリス・ディリーがファッション界のトップモデルへ駆け上がる物語。ワリスの自伝をベースにつくられた映画です。

 13歳で老人の4人目の妻になるよう強要され、逃げてひとりで砂漠を渡り、祖母の伝手でロンドンの大使館のメイドになる。しかしソマリア内戦が勃発し、大使館は閉鎖。ワリスは路上生活者に。ビザの期限切れと違法入手、市民権を得るための偽装結婚など、次々に振りかかる英国に滞在するための問題。そして、彼女の心身に傷を刻んだアフリカの暗い風習。結婚より砂漠の逃避行を選んだ彼女は、その風習にも戦いを挑む。
 有名な写真家に見出され、「世界一美しい横顔のライン」からワールドモードのトップモデル「砂漠の花」へ。彼女が獲得したきらびやかな世界と、現代まで続く女性蔑視と虐待の最たる風習。ワリスという女性の中に並立する光と影を「美」に昇華した映画です。鑑賞後は少し苦みが残るような……。
 ワリス役のリヤ・ケベデが無敵に美しい!

 この映画は2010年1月、シネ・リーブル神戸で観たのですが、エンドロール終了後、音楽だけが流れて、映像がなく、スクリーンが黒いままの時間があったんです。映画の内容について考える時間、あるいは余韻に浸る時間かと思ったけど、社会問題を扱った映画でも今までそんなの観たことありません。まさか映写事故……じゃないですよね。


 『デザートフラワー』サイト:http://www.espace-sarou.co.jp/desert/
 『デザートフラワー』予告編:https://www.youtube.com/watch?v=YzatE3990fY

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 06:32 | category: Movie |
# 沈黙に時が降り積もる ドキュメンタリー映画『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』
JUGEMテーマ:映画


 フランス・アルプスの山中にあり、カトリック教会の中でも厳しい戒律で知られるグランド・シャルトルーズ修道院。観光はもちろんカメラの侵入も許されず、この映画の撮影も1984年の申請から16年後の2000年に許諾されました。
 撮影の条件は、映画は音楽なし、ナレーションなし、照明なしで、撮影したままの映像を使うことと修道院内に入るのは監督のみ。5年後、修道院の毎日が淡々と流れていく2時間50分の映画が完成しました。

 その映像から受けた印象は、フェルメールの絵画の色と空気感は実在したんだ、ということ。修道僧が台所で料理を作るシーンの家具や壁の色、服の色、窓から差し込む光と影の色、部屋に満ちている静謐にして温かい空気。想像でも個性でもない、フェルメールの写生力、描写力のすごさを思い知りました。

 祈りと瞑想、読書と思考に支配された、変わらない日々がただ繰り返されるのですが、最初に映された物品や情景が、後に具体的に描かれて、「ああ、そういうことだったのね」とわかるような、ちょっとした演出も考えられています。
 ネコを世話したり、雪を掘って畑を耕したり、雪山を滑ったり、頭を剃り整えたり、庭で談笑したり、祝祭日には特別な祈祷をしたり。変化のない毎日の中に挟まれる、他愛のない“特別”が本当に貴重なものに感じられてきます。

 寝不足で行くと、寝倒しかねないのでご注意。私もところどころ意識が飛びましたし、熟睡している方もいらっしゃいましたし。
 3時間、修道院の生活を目と耳で体験するもよし、中世・近世の絵画の色彩に理解を深めるもよし。特異な経験ができること、請け合います。


『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』サイト:http://www.ooinaru-chinmoku.jp/
『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』予告編:http://www.youtube.com/watch?v=vU9FTzbl6Z0

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 04:20 | category: Movie |
# シリアスなコメディ、その絶妙が生む混沌 映画『グランド・ブダペスト・ホテル』
JUGEMテーマ:映画


 『グランド・ブダペスト・ホテル』は「ドラメディ(ドラマとコメディのミックス作品)とはなんぞや」がよくわかる作品です。
 めまぐるしく変わるシーンシーンにチャップリン映画を彷彿させる風刺を秘めたコントがくり出されますが、ホテルの上顧客マダム・Dの不審死から始まる連続殺人が物語を貫通していて、細切れという印象は抱かせません。

 1930年代にセレブの社交場として建てられた絢爛豪華なホテル。今は寂れたそのホテルに投宿した小説家は、富豪と噂されながら、狭い従業員部屋で暮らす謎多きオーナーと知り合い、インタビューを試みる。
 戦争孤児で貧しい移民だったオーナーは、華麗を誇った時代のホテルにベルボーイとして勤めていた。彼の上司である中年のコンシェルジュ(レイフ・ファインズ)は、気が利くと顧客からの信頼厚く、特に老齢の未亡人には夜の相手としての評判も上々だった。
 そんな老未亡人のひとり、マダム・Dが彼女の城館で亡くなった。知らせを聞いて駆けつけるコンシェルジュとベルボーイ。マダムはコンシェルジュに城館で唯一価値がある絵画を遺していた。反対する遺族の目をかすめて絵を奪い、ホテルに帰るふたり。絵の裏には「私が殺された場合の遺言書」があり、それにはとんでもないことが書かれていた。
 一方、絵と最後の遺言書を追って、マダムの息子が刺客を放つ。次々と殺されていく関係者に、迫るナチス・ドイツの軍隊。監獄から脱出したり、ホテル仲間に助けられながら逃げ回ったり。
 状況はシリアスなのに、言うこと、為すこと、コメディタッチなので、だんだん常識がおかしくなっていくような感覚に陥ります(笑)。

 砂糖菓子のようなデコラティブなホテルを舞台に、砂糖菓子が重要なアイテムになるところも憎い! エキゾチックな音楽もいいのです♪


 『グランド・ブダペスト・ホテル』サイト:http://www.foxmovies.jp/gbh/
 『グランド・ブダペスト・ホテル』予告編:http://www.youtube.com/watch?v=xlgZQpYGnow

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 03:30 | category: Movie |
# 凡人が天才に迫る“追いつめ愛” 映画『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』
JUGEMテーマ:映画


 『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』は「悪魔に魂を売り渡して手に入れた」超絶技巧を誇る希代のヴァイオリニストにして作曲家、ニコロ・パガニーニとマネージャーとして彼に付き従ったウルバーニの物語。

 パガニーニ役は「21世紀のパガニーニ」との呼び声も高いヴァイオリニスト、デイヴィッド・ギャレット。クラシックにこだわらず、バンドを率いてクラシックとロックのクロスオーバーを試みたり、モデルを務めたり、演奏技巧のみならずパフォーマンスの才のあったパガニーニを演じるにふさわしい人物。ギャレットのヴァイオリンをサラウンドで聴くだけでも、映画館で観る価値があります。

 ストーリーは、ゲーテの戯曲『ファウスト』を、ファウスト=パガニーニ、メフィストフェレス=ウルバーニ、グレートヒェン=シャーロットで翻案したようという印象。
 パガニーニに対するウルバーニの執着がまさに“愛と狂気”。BLなんて甘いものじゃない。プラトニック・ホモの極地と断言します。

 脚本・演出は、観客がパガニーニという人物についてそこそこ知識があることを前提に、彼を現代のロックアーティストに通じるパフォーマーとして描いているので、説明不足&イメージ先行が否めないのですが。ジャレッド・ハリス演じるウルバーニの“追いつめ愛”の凄まじさはよく伝わってきます。

 本作の監督・脚本・撮影を務めたバーナード・ローズは、『不滅の恋/ベートーヴェン』の監督・脚本でもあります。『不滅の恋/ベートーヴェン』を観たとき、ローズは生で美味しい素材を、刺身ではなく、カルパッチョにしちゃう監督さんという印象を持ったのですが、本作ではいっそうその思いを強くしました(カルパッチョも好きですけど!)。


 『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』サイト:http://paganini-movie.com/
 『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』予告編:http://www.youtube.com/watch?v=wp0vuaMkEqU

 
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# ロビン・ウィリアムズ追悼 映画『バードケージ』は芸達者ぞろいの名作コメディ
JUGEMテーマ:映画


 ロビン・ウィリアムズが8月11日に亡くなられていたのですね。
 シリアスからコメディまで、ファンタジーからSFまで、人情ドラマから社会問題を扱ったものまで、幅広い作品の多くで主人公やメインキャラクター演じてこられたウィリアムズ。なかでも私は『ミセス・ダウト』と『バードケージ』が好きです。

 『バードケージ』は、ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』を映画化した『Mr.レディMr.マダム』のハリウッドリメイク作品。
 ナイトクラブ「バードケージ」のオーナー・アーマンド(ウィリアムズ)と店の花形・アルバート(ネイサン・レイン)は男性同士のカップル。
 アーマンドの20歳になる息子ヴァルが恋人バーバラと婚約することになり、彼女の両親がヴァルの両親に会いたいと言ってきた。バーバラの父親(ジーン・ハックマン)はゲイクラブを取り締まるべきと考えている堅物な上院議員。ヴァルのために「普通の家庭」を演出しようと、アーマンドはヴァルの実母であるキャサリンを招くが、母親としてヴァルを慈しみ育ててきたアルバートは面白くない。両家挨拶の当日、渋滞で遅れているキャサリンの代わりに現れたのは……。
 芸達者ぞろいのドタバタに笑えて、ほろりとするコメディ。また観たくなりました。

 私の好きなマンガのひとつ、篠崎佳久子の『N.Y.LOVE カミニート』に、『ラ・カージュ・オ・フォール』にインスパイアされたと思われるシーンが出てくるんですよね。
 そして、今気がついたのですが、『ミセス・ダウト』も『バードケージ』も女装して“おばさん”になる男性が出てくるのだわ。

 
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# 映像関係者必見! 完成しなかった映画の証言映画『ホドロフスキーのDUNE』
JUGEMテーマ:映画


 渋谷のアップリンクに『ホドロフスキーのDUNE』の試写会に行ってきました。
 デヴィッド・リンチ監督、カイル・マクラクラン主演の映画『デューン/砂の惑星』は、ご存知の方、多いですよね。それより以前にアレハンドロ・ホドロフスキー監督が制作を進めていた映画『DUNE』のメイキングドキュメンタリー映画です。

 この映画のなにがすごいって、フランスの漫画家メビウス(ジャン・ジロー)が描いた映画の絵コンテが見られること!
 メビウスの漫画を見たホドロフスキーは「これぞ『DUNE』のカメラだ!」と彼を探し出し、画面の要素、構図、アップや引き、パンなどのカメラの動きまでお任せで映画1本分の絵コンテを描かせます。その画撮(コンテ撮)動画があって、見れば、映画がどんな映像になるはずだったか、どんなに画期的になものになるはずだったか、わかるんです。
 アニメの絵コンテを見慣れている目に、メビウスの絵コンテは、そのまま実写映像に置き換えれば、映画は完成するだろうと思えるくらい具体的でした。

 ホドロフスキーはさらに、特殊効果にダン・オバノン、メカ美術にクリス・フォス、美術デザインにH・R・ギーガー、音楽にピンク・フロイドとマグマを引き込んでいきます。
 各分野で非凡な才能を持つ彼らは、ホドロフスキーにとって「前代未聞の傑作映画」のために団結して戦う「ウォリアー(戦士)」でした。
 キャストも同じく、サルバドール・ダリ、オーソン・ウェルズ、ミック・ジャガーなどなど、このキャラクターにはこの人物と決めたら、一歩も引かない。
 でも、特にスタッフについては、会ってみて失礼な態度をとられたら、「仕事に魂が感じられない。そんな人には傑作など生み出せない」と座を蹴って帰ってしまうことも。吸引力と我の重量感と影響力の大きさはブラックホール並み。

 しかし、『DUNE』は制作会社が付かずに頓挫します。そりゃ、資金を出し、配給にかける立場として「1時間半の映画にしてくれ」と要望出したら、ホドロフスキーに「12時間でも足りない」と返されてはね……。

 絵コンテや人物設定画・美術設定画を含む『DUNE』の百科事典ほどの厚さのある企画書は、デヴィッド・リンチに渡され、『デューン/砂の惑星』になりました。でもそれは、ホドロフスキーが創ろうとしていたモノとは全然違う、「普通の作品」に堕していたのです。

 『DUNE』の企画が持ち込まれたいくつかの映画会社には企画書が残り、その要素が『スター・ウォーズ』をはじめとするSF映画に受け継がれていきました。また、オバノンとギーガーは『エイリアン』を誕生させます。
 『DUNE』が生み出したさまざまなアイデアはSF映画を一気に進化させたのでした、というドキュメンタリー。

 『ホドロフスキーのDUNE』は、映像制作に携わっている方はもちろん、編集やライターなど、映像作品に関わる方も観たほうがいいとお薦めします。
 メビウスの絵コンテはすごいし、才能ある人を巻き込んでいくホドロフスキーの惹力もすごい。それ以上に、多くの人が能力と時間のかぎりを尽くしたものは、頓挫しても、続くものに影響を与えるのだということ。そして、メビウスが絵コンテから『L'Incal(アンカル)』という漫画シリーズを描き上げたように、新たに生まれるものがあるのだということ。きっといつか『DUNE』は映像化されるという期待も含めて、前向きになれる映画です。


 『ホドロフスキーのDUNE』サイト:http://www.uplink.co.jp/dune/
 『ホドロフスキーのDUNE』予告編:http://www.youtube.com/watch?v=q75RaebfRXw

 
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# 人形に命を与える作り手の愛! 3DCG映画『パラノーマン ブライス・ホローの謎』
JUGEMテーマ:映画


 新宿バルト9で『パラノーマン ブライス・ホローの謎』鑑賞。クレイ製の人形をはじめ、造形物が驚くほど滑らかに動いていて、表情も豊かで自然で、3Dクレイアニメの最先端との評判にうなずきました。1コマ1コマ、少しずつ動かして撮影するため、アニメ制作だけで2年かかったという超力作です。
 3DCGでは出せない実体感と愛情あふれる手作り感が映像に血を通わせていて、人形と意識せずに映像に入り込んで楽しめる映画でした。

 主人公のノーマンが11歳らしいストレートな思いで問題にぶつかっていくのがかわいいv 画面の隅々まで凝っているので、3Dブルーレイでの鑑賞をお薦めします。

 エンドロールのあとでノーマンの人形の制作過程が早回しで映されるのですが、デザイン画から型取りされ、裸の人形に服が着せられ、表情が入って動きだすさまにジーンとしました。


 『パラノーマン ブライス・ホローの謎』サイト:http://paranorman.com/
 『パラノーマン ブライス・ホローの謎』メイキング映像:http://www.youtube.com/watch?v=1RGsYW52DHs


 『パラノーマン ブライス・ホローの謎』は「ドリパス」で観ました。ドリパスとは、リクエストの多かった映画を映画館で上映するというもの。リクエストをポチるとチケット購入者として登録され、企画が成立した時点で支払いが発生します。合理的。

 「ドリパス」サイト:www.dreampass.jp

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:20 | category: Animation |
# 「アラン・レネ追悼特集」映画上映会で『去年マリエンバートで』を観る
JUGEMテーマ:映画

 
 アンスティチュ・フランセ日本にて5月9・10日開催の「アラン・レネ追悼特集」映画上映会に参加。『慎み深い革命家、アラン・レネの方法論』『ガーシュイン』『薔薇のスタビスキー』『去年マリエンバートで』を鑑賞。濃い時間を過ごしました。

 『慎み深い革命家、アラン・レネの方法論』と『ガーシュイン』は仏語・無字幕でお手上げ状態だったのですが(仏文学修士なんですけどね、一応 orz)、アラン・レネの映画技法にはバンド・デシネが影響していると知り、あのカット割りや場面転換の不思議はそういうことかとものすごく納得。
 『ガーシュイン』は、『ヴァン・ゴッホ』『ゲルニカ』といった絵画を映像化した短編を制作し、音楽にも造詣が深いレネ監督ならではの、かなり趣味的な伝記映画。音楽家ジョージ・ガーシュインの生涯をイラストと音楽と解説で綴ります。ガーシュインメロディに存在する「NYのメランコリー」の正体に迫っていて興味深いものでした。

 『薔薇のスタビスキー』は1933年にフランスで起こった「スタビスキー(スタヴィスキー)事件」の映画化。伊達男の詐欺師スタビスキーのゴージャスな生活を描きながら、父親の自殺や数々の名前をもったことでアイデンティティに惑う心情を描いていて、レネ作品の中ではわかりやすくてスペクタクルでした。

 そして、大本命『去年マリエンバートで』。約四半世紀前に観たきりだったので記憶違いがあったり、新たな発見があったりで、「こんな話だったのか!」と面白く鑑賞しました。
 デルフィーヌ・セイリグの衣装がポイントになっていたのですね。シャネルデザインのさまざまなドレスが美しかった!
カラーだったらなおよかったのにと思いますが、あの城館とフランス式庭園の禍々しくも感じる非現実感はモノクロならでは、ですよね。
 黒澤明の『羅生門』がモチーフだそうで、なるほど、あのカット割りはそういうことか、などなど発見の多い機会でした。


アンスティチュ・フランセ日本「アラン・レネ追悼特集」サイト:http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1405090510/



アンスティチュ・フランセ日本の1階にはパリ風の書店があります。カフェやレストランもあり。

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:10 | category: Movie |
# 「『グランド・イリュージョン』プレミアムBOX」は劇場版+αの発見があって大満足!
JUGEMテーマ:映画


 「『グランド・イリュージョン』プレミアムBOX」が到着したので、日本語吹替を早速視聴。
 映画館で観ているので結末も「あの人」の正体も知っているのですが、見返しても面白い! 特にオープニング&エンディング含めて9分ほどシーンが追加されているエクステンデッド・エディションは、劇場公開版で「なんかちょっと物足りない」と思った部分が埋められていて大変満足!
 未公開シーンで「ああ、そういうことがあったのね」とわかることが多かったり、キャスト&スタッフインタビューでキャストが「モーガン・フリーマンが(目の前で)話して動いてる!」ってキャッキャしていて微笑ましかったり、購入を検討されている方には「プレミアムBOX」をお薦めします。

 ジャック(CV:細谷佳正)はフォーホースメンの中では若輩で、他の3人に比べたらあんまり話しませんが、見せ場は多いし、細谷さんの演技も軽口から焦り、苛立ちまで若者らしさが自然でよかったです。特に大役を果たして他の3人に誉められるところは、ほんとにうれしそうで好感度増し増し。日本語吹替は役者さん全員、役柄に合っていて、演技もナチュラルで、配役を決めた方はすごいなあと思いました。
 「マジック+強盗」の「今までにない映画」。劇場公開版のレンタルも始まってますので、ぜひご覧になってください!


 マジックを扱った映画と言えば、『マジック・ボーイ』が好きですv
 「フーディニに継ぐ脱出マジックの天才」と謳われた父を持つダニーはマジックの神童。横暴な市長の息子をマジックでからかったことから市長の悪事を知ることになり、かつて父が死んだ警察署の独房から脱出を図る事態に……。
 製作総指揮はフランシス・F・コッポラ、監督はキャレブ・デシャネル、脚本はメリッサ・マシスンで、『ワイルド・ブラック/少年の黒い馬』のチーム。アメリカ映画ですが、ヨーロッパ映画っぽい渋みのある作品。ダニー役のグリフィン・オニールが小生意気でかわいくて、「マジック+少年」もいいですv


 『マジック・ボーイ』に似た雰囲気でお薦めのマンガが『ファンタジウム』(モーニングKC/講談社)。あの『ANIMAL X』の杉本亜未がこんなファンタジックな作品を描かれるんだと驚きました。でも人間のもつどうしようもない「業」の部分は、『ANIMAL X』ほどではないですが、やはり救いがたく描かれていて……。その部分を“マジック・ボーイ”長見良がマジックという魔法でひと時でも祓ってくれる物語なのかな、と。

 ディスレクシア(読み書き障害)をもつ良は、その障害を理解できず怠け者とののしる父親や学校から逃げてホームレスのように暮らしていた。ある日、年老いたマジシャンに出会った良は、彼から奇術のノウハウを学ぶ。それは良の障害に気づいたマジシャンが、生きる術を与えようと教えたものだった。
 スライハンドを中心にマジックで天才的な才能を開花させる良。老マジシャンの死後、非合法カジノで代打ちギャンブラーをしていた良は、カジノのセキュリティ担当としてやってきた北條に出会う。彼は老マジシャンの孫で、マジシャンに憧れたものの、祖父と父との不和などから諦めてサラリーマンになっていた。文字が認識できない良に、祖父が残したマジックのネタ帳を読んでやる北條。良のマジックショーに魅せられた北條は、彼をショービジネスの世界へ連れ出すことにする。

 相棒となった良と北條の「わかり合ってなさ」が笑えます。北條の努力で中学校に編入できた良に対するいじめやショービジネスの裏側のドロドロ部分でドス黒くなった気分が、良のマジックで「変わる」のが清々しい。
 『グランド・イリュージョン』にもある「マジックは信じる心がないと成立しない」というテーマが『ファンタジウム』の根底にもあって、マジックのみならず人間関係のキモにもなっているところが、読後感のよさにつながっていると思います。
 7巻で止まっていましたが、連載再開とのことで、また良のマジックショーが観られるのが楽しみですv

 
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永久保存版 完全ボーイズラブゲームガイド
永久保存版 完全ボーイズラブゲームガイド (JUGEMレビュー »)

1999年の開発開始から、ボーイズラブ(BL)ゲームのすべてを網羅したガイドブック。特に一世を風靡した人気作品はカラーページでクローズアップ! 表紙はBLゲーム原画家である由良&たたなかなの合作描き下ろし。また由良&たたなかな対談や淵井鏑、ゆりの菜櫻のインタビューも収録。
「BLゲームってどんなジャンル?」「BLゲームってどんなタイトルがあるの?」という初心者向けのカタログムック本です。BLに興味のある女性はもちろん、男性の方で「知りたい」という方にもオススメ! ただし肌色多めなので、要注意。
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TALES いのまたむつみ画集
TALES いのまたむつみ画集 (JUGEMレビュー »)
いのまたむつみ
RPGとして不動の人気を保つ『テイルズ・オブ・デスティニー』『テイルズ・オブ・エターニア』『テイルズ・オブ・デスティニー2』のキャラクターデザインを務めたいのまたむつみの『テイルズ』イラストを網羅。見逃したイラストもきっとココにあるはず! キャラクター造型やイラストの描き方について、コメントやインタビューもバッチリ収録。紙や印刷にもこだわってます。時間をかけただけのクオリティを堪能してください。
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WOLF'S RAIN SEEKING
WOLF'S RAIN SEEKING "RAKUEN" 川元利浩画集 (JUGEMレビュー »)
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アニメ『WOLF'S RAIN』のキャラクターデザインを務めた川元利浩の初画集。カジュアル、レトロ、ヴェネチアンマスカレード、ネイティヴアメリカンと、さまざまなモードジャンルから組み立てられたキャラクターたち。もちろん、オオカミの造形も要チェック! 川元ファン必携の1冊!
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艶−中嶋敦子STYLE−
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指先にくちづけて―パラケルスス・パラミールム
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伊藤 智砂
16世紀に実在した、稀代の錬金術師にして医学の革命児、パラケルスス(テオフラストゥス・ホーエンハイム)をモデルにした「BL(ボーイズラブ)小説」です。
パラケルススと、彼が作り出した小さなホムンクルス「ヘルメス」は流浪の旅を続ける相棒同士。スイスのバーゼルに立ち寄った彼らは、町の有力者にして出版王フロベニウスに出会います、そのときから、なんだか二人の関係がおかしくなってきて……。
異端視され、火炙りの危険にさらされながらも、ヘルメスを手放せないパラケルスス。そんなパラケルススを守りたいと思うヘルメスは、パラケルススの危機に絶体絶命の手段を取ります。
史実をご存知の方には、パラケルススの「ヘルメス信仰」ってそういうこと? と思っちゃえるかもしれません(笑)。
※ BL的な表現や描写がありますので、苦手な方はご遠慮ください。
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『鋼の錬金術師』アニメ全話を徹底解説! まさにコンプリートな1冊です。特にアニメの『鋼』世界の設定を考察した「『鋼の錬金術師』徹底研究レポート」は、ファン必読です。
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スクウェア・エニックス
アニメ版『鋼の錬金術師』に登場する80余名のキャラクターを一挙にご紹介。各キャラの名セリフや特別な人間関係などを、アニメのシーンもいっしょにピックアップしています。
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魔探偵ロキRAGNAROK PERFECT GUIDEBOO
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木下 さくら
『魔探偵ロキ』『魔探偵ロキ RAGNAROK』の世界をキャラクターの魅力分析やストーリーダイジェストで完全ガイド。作品に対するこだわり部分やカラー画集にリンクしたイラストコメントなど、「作者の声」がたっぷりつまった1冊! 描き下しイラストに、学生になっちゃった『ロキ』メンバーのコミック、アニメ版スタッフや声優のコメントもありの「ぎっしり」ガイドブックです。
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